雨
藤士
「先生、今日は何をお探しなんです?」
八百屋の前で立ち尽くしていると、顔見知りの店主にそう声をかけられた。
「何か、滋養に良いものを……」
ひとつ唸ってそう答え、店を見渡す。
店主は、ああ、それなら―と、所狭しと並べられた野菜の中から、一本の長芋を取ってきた。
「麦とろ等にして食べられると良いですよ」
浅黒い顔に眩しい笑顔で、店主はそう言ってきて。
「では、それにします」
と、僕もまた笑顔で、そう返したのだった。