少女


どろりとした沼のなかに、沈んでいくような感覚。この倦怠感には、覚えがあった。

…たぶん私は、また眠ってしまったのだ。


先ほどまで感じていた足首とももの鈍い痛みは、いまはただずっしりとした重みとなって、私の歩みを止めている。
焼けるように痛い砂が頬を突き刺して、それでも立ち上がれずに情けなくも寝転がる。


…何と云う、有様。

そう、冷たい胸の中でつぶやくだけで、嗤う気力さえも残されていなかった。


ここは、私が住んでいた町であったとしても、ひとつの場所でしか生活していなかった私にとっては、ほとんど知らぬ土地だ。

考えてみれば、日を浴びて地面の上を歩いたことだって、この町に来てからは片手で足りるほどしかなかった。


やはり籠の中の鳥は、外を知らない。


…あまりにも、知らな過ぎた。


あきらめにも似た感情で、瞼の力を抜く。しかし、ついさっきまで周りを囲んでいた野次馬共の話し声が、声色が、いままでと違うものになったことに気付いた。


何か、あったのだろうか。


重い瞼をこじ開けて、わずかに開いた視界。


目を焼くような日の光があふれるなかで、あの茶色を、見つけた。



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