Damask Rose [短編集]
「お待たせ。美砂ちゃーん、長谷部君」
思わずぎゅっと美砂ちゃんに抱きついた。
「わっ、柚!」
「はいはい。公の場で止めとこうねー柚さん」
だけど直ぐに壱也がそれを引き離した。
「ひどいー」
「ほら、柚の好きなアイス買って来るから」
壱也が指差した所には真っ赤な車がいて、アイスクリームの看板が出ていた。
たまにしか見ない美味しいアイス屋さんの車に、思わず嬉しくなる。
「柚っちは分かりやすいな。じゃあ俺たち買ってくるから影で待ってて」
長谷部君がビルの影を示しながら言って、壱也と歩き出した。
「今日の柚可愛い。壱也君に変なことされなかった?」
「何もないよ!」
美砂ちゃんがいきなりそんな事聞くから、何だか顔が熱くなった。
「美砂ちゃんの方が可愛いって言うより、綺麗」
美砂ちゃんは身長が高くて(壱也や長谷部君よりは低いけど)スラッとしているから、今日のショーパンだってすごく似合ってる。
「美砂ちゃんこそ…長谷部君とどうなの?」
美砂ちゃんは長谷部君にずっと片思いしてるんだ。
「私は…「ねぇ、君たち」
美砂ちゃんの言葉を遮って、別の声がした。
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