Damask Rose [短編集]

図書室とアイツ



“好きな歴史上の偉人を選んでまとめること”
レポート用紙3枚以上!


って先生に言われたのは昨日のこと。


期限は2週間だけど、放っておいたらいつまでたってもやらないから…


だから今日は放課後を使って課題に取り組むことにした。


「柚ー、結局誰にしたんだよ?」


壱也も一緒に。


「源義経にしたよ」


実はこの前の旅番組の影響なんだけど。


「この前テレビで京都の特集してたね。柚ちん単純〜」


「う、うるさいな!そういう壱也は誰にしたのよ」


「天草四郎」


えっと、何か聞いたことある…何とかの乱を起こした人だっけ?


察したように壱也が言った。


「島原の乱の指導者だよ。最後は自害したらしいけど、はっきりとした素性は分かってないんだって〜。興味わくよね?」


「……わかない」


「な〜んで?」


そう言いながら壱也は、本棚の前に立つ私の肩に両腕を伸ばしたまま乗せて、体重をぐっと前にかける。


「きゃっ…」


「おっ、可愛い反応」


「からかうの止めて」


心臓もたないから!
心臓の音、聞こえちゃう…


「あの本、とりたいんでしょ?」


探していた本は私の身長より上の棚にあって、手を伸ばしても届かない。


「うん…」


だからおとなしく壱也にとってもらうことにした。


このままの体勢で。


「はい、どうぞ」


「どうも。あの…そろそろ重いです」


「柚〜、今日は帰りにアイスでも買おっか?」


話し逸らさないでよ!
うゔ、壱也絶対楽しんでる。


放課後の図書室だから人は少ない。


それが何よりの救い…。





***+α***

(柚、こっちのソーダ味うまいよ)

壱也が差し出した食べかけのアイス

(…おいしい)


食べちゃった…。
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