Damask Rose [短編集]
低血圧とアイツ
「柚ちゃん、毎朝ごめんね。あの子ったら私じゃ起きないのよ」
「平気です。任せて下さい」
誇らしげに手のひらで胸を叩いてみせる。
谷宮柚、私の毎朝の任務は幼なじみの香坂壱也を起こすこと。
低血圧の壱也は朝がとっても苦手。
壱也のママ、美鈴さんが起こしたって、全く起きないし。
それに、寝起きの悪さはもう、口じゃ説明出来ないくらいすごくって…
「壱…壱也?起きてくれなきゃ学校遅刻しちゃうー」
「…ゆ……ず」
寝起きがものっすごい悪いはずなのに、幼なじみの私が起こすとなぜか大人しい。
これは昔からそう。
「ほらほら、早く用意しちゃって!」
「ん…柚…」
布団に潜ったまま姿を見せない彼から、いったん視線は外して時計を見る。
「何?」
時計の針が急かすようにカチカチと音を立てて進む。
「柚が、ちゅーしてくれたら起きても良いよ」
「な…!だったら一生寝てなさい!!」
朝っぱらからドキドキさせないで――!
**+α**
(柚ちんの意地悪ー)
聞こえないふり、聞こえないふり。