Damask Rose [短編集]
雨降りとアイツ
「柚ー、雨」
後ろから不機嫌な声がした。
幼なじみの壱也は、小さい頃から雨が嫌いだ。
私も好きな方ではないけれど…。
「傘持って来て良かった」
「東さんの言う通りー」
あぁ、あの人ね。
人気番組のお天気お姉さんのことだと直ぐに気付いた。
「でも傘ない」
「えっ!何で?今朝持ってたよね?」
確かに今朝隣を歩いている壱也の手には傘が握られていた。
見間違いなんかじゃないし、何で?
「はせやんに貸した」
俺って親切だよねーなんて自分で付け足す。
長谷部君は壱也がいつも一緒にいる友達で、その彼の姿を探してみても、教室にはもういなかった。
「どうするの?土砂降りだよ?」
「柚ちん、いーれて」
ニヤリという言葉がぴったりな、そんな笑顔を浮かべながら彼にそう告げられた。
「えっ!私の傘に入るの?」
それって世間一般に言う相合い傘―?!
「何想像してんの?外だからナニもしないよ〜」
「想像してないもん!それにその言い方じゃ、外以外では何かしてるみたいじゃない」
「照れてる」
「照れてない!あんまり言うと入れてあげない」
壱也から顔をあからさまに逸らして反対を向く。
「ごめんなさい。柚さん、俺のプリンあげるから」
何それ!子ども扱いしちゃって…
だけど私は簡単に許してしまうんだ。
**+α**
(濡れてる制服って…ゾクゾクするー)
危険!
(何で逃げんの?)
ひー、何その笑み!