Damask Rose [短編集]
微熱とアイツ
何だか今日は暑い。
制服の胸元を掴み、前後させながら体に風を送り込む。
「柚、ヤらしいよ」
「壱也の頭の中がやらしいんです!」
「男の子ですから」
隣を歩く壱也を睨んでみる。
「怖くないよー」
意味なし!
だから直ぐに視線を逸らした。
あまりにも急に顔を逸らしたため、地面がグラリと揺れた。
「おい、何やってんだよ」
体勢を崩しかけた私を壱也が直ぐに支えてくれた。
「柚、こっち見て」
「ん…」
振り向くと壱也が私のおでこに手をあてた。
「あつ…熱あんじゃん」
「平気。今日出たら明日お休みだし」
「無理すんな。今日は早退しろよ」
ムッとする私に壱也は頭を撫でながら言った。
「とりあえず保健室な」
校門は見えていたし、そこまでは何とか歩くことにした。
だって壱也ってば、お姫様抱っこしようとするんだもん!
それだけは必死に必死に阻止した。
***+α***
(潤んだ目で睨まれても、逆に興ふ…)
(何?)
(いえ、何でもありません)