母の心音(こころね)
「午後になって、二見が浦へ行ったんや。両手に孫の手を引いてな。二人の娘のことを忘れておった。お宮の境内の美しい景色を眺めとったんや。そしたらな、そこに椿の花が咲いておってな、思わず孫にほほずりしたんや。境内の中を走り回って居る孫を見てな、思ったんや。長女も母になってこれからや、今が盛りやってな。孫達も巣立って、賑やかなのは今だけやって、そう思ったんや」



二見ケ浦
緑の松に色添えて
赤き椿の今を盛りに


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