母の心音(こころね)
「一休みして山に着いたんや。案の定、植林した幼い木は雪に押し倒されておったわ。行き倒れのようにな。そりゃ我が子のように哀れでな、頭を撫でるようにして、一本一本起こしたんや。雪を払う毎に、自分の前にスーっと立ち上がる姿を見てな、幼い木が育って立派な山になるやろなと思ったんや。そしてな、老い先短い自分はこれ以上の大きな木にはなれないけど、育てた子供達は大きな山になればええけどなって思ったんや。そんな気持ちでな、一本一本起こしたんや」



年老えど
山に成れにし我なれば
雪に倒れし杉木起こしに


< 13 / 118 >

この作品をシェア

pagetop