幼なじみの彼と彼女〜大人編〜
チーム関係者の人達が口々におめでとう、と言ってるけど、俺は口に人差し指を当てて周りを見回した。

また静かになる。



まだ…

梓は俺に返事をしていない。

絶対に…

嫌とか言わせない。



「…祥ちゃん、私や子供を抱えたら、色々大変だよ?
今までみたいに自由に遊んだり出来ないよ?」

梓の瞳には涙が浮かんでいた。

「…別にいいよ。そんな事なんて本当にくだらない。
俺はお前をあの時、諦めてしまって、ずっと悔やんでいた。
あんな男に…お前を譲るんじゃなかった」

これが、俺の本音。

梓に再会してから、ずっとそう、思ってた。

もう、俺、自分を抑えるのは無理。

梓を力の限り、抱きしめた。



「そんな苦労をするならば。
わかっていれば、俺はお前を絶対に手放したりしなかった。
お前の幸せを思ってした事が間違っていた。
俺の人生で最大の汚点だよ」
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