全国民模様制度
彼女は俺の問いに一瞬強張った顔をして、しかしすぐにいつもの笑顔に戻ると新聞を取り出し、見るようにと促す。
そう言えば最近は忙しく目の前の数字を追うので精一杯で、ニュースなんて見ていなかったっけ。
早速紙面に目を落とすと大々的に【全国民模様制度スタート】の文字が躍る。
何でも政府の開発した薬で、個人の特性を一目で分かるように……と可決された法案らしい。
薬は昨晩のうちに国中へ空中散布され、そして今に至るという訳だ。
確かに、最近は仮面を貼り付け、腹の中では何を考えているのか分からない奴ばかりではあるが。
だとしたら……やはりパンダである自分に不満が残る。
これだけ会社を引っ張っているのだから馬あたりでもいいだろう。
果たして本当にこんな事で何かが変わるのだろうか?
意を決して帽子とマスクと外し、辺りの様子を眺めていると目の前に狸柄をした部長が現れた。
「佐藤君、ちょっといいかね」