・・大切な場所・・
本番
「いらっしゃいませ。ご予約のお名前を頂いても宜しいですか?」
入口で芳村が軽く会釈をし、名前を確認して席へと案内する。
それぞれの卓が恋人達で埋まる頃、細目のシャンパングラスは、琥珀色に満たされる。
キャンドルの灯りに灯され、店内は柔らかく影を揺らす。
琥珀色が、恋人達の喉を潤す時には、オードブルが運ばれて来た。
「ホタテと蟹肉のファルス・トマトジュレ添えです。」
白磁の器の中は、トマトの赤で満たされ、回りを琥珀色のゼリーが囲んでいる。
フォークとナイフでトマトを割ると、中からソースに絡まるホタテと蟹肉、細かく刻まれた野菜達が溢れだす。