・・大切な場所・・

本番



「いらっしゃいませ。ご予約のお名前を頂いても宜しいですか?」

入口で芳村が軽く会釈をし、名前を確認して席へと案内する。


それぞれの卓が恋人達で埋まる頃、細目のシャンパングラスは、琥珀色に満たされる。


キャンドルの灯りに灯され、店内は柔らかく影を揺らす。


琥珀色が、恋人達の喉を潤す時には、オードブルが運ばれて来た。

「ホタテと蟹肉のファルス・トマトジュレ添えです。」


白磁の器の中は、トマトの赤で満たされ、回りを琥珀色のゼリーが囲んでいる。


フォークとナイフでトマトを割ると、中からソースに絡まるホタテと蟹肉、細かく刻まれた野菜達が溢れだす。




< 49 / 56 >

この作品をシェア

pagetop