シロ姫のお城

あたしはいつものように、少しずつ赤く変わってゆく空を見上げて歌っていた。
夢中になって周りの音や寒さも気にせずにただ歌っていた。

「へぇ~君、いい声してんね!」

いきなり声をかけられたことに驚き、曲が途切れる。
そして声がした方に顔を向けると、同じ中学校の制服を着た男子がいた。

茶髪に長い前髪、腰パンしたズボンのポケットに手を入れた、いかにもチャラそうな男。

あたしはそれを無視して、そろそろ帰ろうかと立ち上がった。
そして階段を降りようとした時、腕をつかまれた。

「あっれ~?無視?せっかく褒めてやったのにさ」

ああ…もうムカつく。

「は?」

それだけ返した。

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