--tear--
辿り着いた場所は…
何もないけど、景色が奇麗に見える所だった。

「わ~すごい!」
あたしは自然と笑顔になった。
「だろ?俺の好きな場所なんだ!」
愁は少し得意げに言った。
でも、たしかに素敵な場所だと思う。

あたし達は唯一そこにあったベンチに座った。
しばらく景色を眺めていると、愁が口を開いた。
「澪ちゃんって、良い子だよな~。」
さり気無く言った一言だけど、“良い子”って言葉に恥ずかしくなった。
「何が?」
「だって、真衣ちゃんの協力をするために、毎日屋上来てんでしょ?」
真衣が大貴を好きだってこと、やっぱりバレバレだった。
「親友だから…。」
「親友でも偉いよ。自分が我慢してまで付き合えるなんて。」
「そうかな?」
あたしは少し褒められたみたいで、今までの気分が少し明るくなった。
多分愁は何にも考えてなさそうで、実はあたしの気持ちに気が付いていたんだと思う。

それからあたし達は、他愛のない話をした。
その時間がなぜか楽しかった。



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