あの夏を忘れない
「何か俺に聞きたいことでもあるの?」






「…私が?」



「…小田春貴に?」






「ないの?俺自己申告しないといけないの?」







くすくすと楽しそうに笑いながらサラサラの髪の毛を揺らした。






後ろの風景に溶け入りそうな小田春貴を見ながら、楽しく笑う笑顔の裏を探す自分がいた。







「まぁ…じゃあまずそのフルネームで呼ぶのそろそろやめろよ。小田でも春貴でもいいからさ。なんかフルネームで呼ばれるたびに返事しないといけない衝動に駆られるんだよ。」






「…なるほど。そう言われればそうだね。じゃあ小田…くん?」







「春貴でいいよ。」







「春貴…ね。」














平常心を装いつつも初めて男の子の名前を呼び捨てにするドキドキを胸に刻んだ。

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