あの夏を忘れない
「…あ。おかえりー!遅かったね!」







今日も出迎えてくれたのは姉だった。






「ご飯先に食べちゃったょー」






机にはラップに包まれた私の分の昼食が並んでいた。







「うへぇぇぇ…本当に?!」






姉がソファーに寝転がりテレビに向かって騒いでいる。






どうやら怖い話でも観ているらしい。







「うゎっ」

「まじで?」






ところどころ声を漏らして目を隠しながらも、テレビから目を離さない。







黙々とご飯を食べると食器を台所へ運んだ。






食器を洗っているとテレビを観終わったらしい姉が目を赤くしてビデオを渡してきた。







「今日も華と慎吾と遊ぶんでしょ?是非ごらんあれ!」







ビデオには手書きで【本当にあった怖い話】と書かれたシールが貼られていた。






「まぁ…ちょっと怖いけどね。」







目頭にたまった涙をふきながら、嫌な笑いを浮かべる。







「…ありがとう」







姉はニヤッと笑うとそそくさと部屋へ向かった。

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