木漏れ日が差し込む場所
長い間、この瞬間を待っていた。

「はじめまして」

そう口にしてみたものの、本当はずっと前から彼女のことを知っていた。

「はじめまして」

声を聞くのは何度目だろう?図書館という場所柄か、なかなか口を開く者はいない。

「桜井響一です。南高の三年」

彼女の名前を知りたい。その気持ちからか、自分が先に名乗っていた。

「橘小百合です。北高二年」

そう言った彼女の笑顔には僅かに浮かぶ緊張。

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