木漏れ日が差し込む場所
午後八時。閉館の放送が流れる頃には、ほとんどの人が帰路に着いていた。

そんな中、すぐそばで席を立つ気配を感じた。

「さようなら」

その言葉を聞くまで、隣りに人が座っていたことさえ忘れていた。

自分に向けられた言葉なのだろうか?

声の主を見上げ、確かめる。

しっかりとこちらを見つめる彼と目が合い、瞬時に顔を伏せる。

「さ、さようなら」

久しぶりに持った異性との接触。顔を上げられないまま、小さな声でそう呟くことが精一杯だった。
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