流星群【短編集】
喜代子は松ねぇに引きずられるように、清彦の前へと連れていかれる。
『清彦さん、待っていたのよ』
松ねぇの声の先には、草色の浴衣を来た、背の高い男。
喜代子は咄嗟に松ねぇの蔭へと隠れる。
『やぁね、キヨちゃんたら。恥ずかしがってるのね』
頬を紅く染め、はずむように松ねぇは言う。
清彦と呼ばれた男は喜代子の目線に合わせてしゃがみこみ、頭を撫でる。
『キヨちゃん、可愛い浴衣だね。
向こうの屋台に林檎飴があったから、買ってあげようか』
『あら、よかったわね。キヨちゃん』
ふるふると、首を横に小さく振り続ける喜代子にお構い無く、清彦と松ねぇは屋台の間をすり抜けていく。
はぐれないようにと、松ねぇの浴衣の裾を掴みながら、喜代子は後ろ髪引かれる思いで振り返ると。
境内の闇夜と光の境目に、飴細工の屋台が取り残されたようにぽつんと光り
喜代子もまた
楽しい一時の余韻は消え去り、一人取り残されたかの様に急に心細さを覚えるのだった。
□ 飴
■□ 細
■□ 工
■□
END