流星群【短編集】
多江と亮佑は地下鉄を乗り継ぎ、街の山手へと向かう。
『どこに行くの?』
多江の問い掛けに、亮佑はただ秘密と口を閉ざした。
やがて二人は地下鉄を降り、改札を抜けて狭い路地に入る。
もわっとした温かい空気に、じわじわと汗が滲む。
路地にはテナントビルに納まったカフェやバーが立ち並んでいて、いかにも隠れ家と言う名が似合う通りだった。
『この角にあるビル、こないだうちの会社が買ったんだ』
亮佑が言う。
『今、内装とか全部やり替えてて。突貫で、土日も仕事させてるんだけど。今なら面白いものがみれるはず』
また仕事の話か。
多江は急に興味を失っていく。
休日でも仕事の話をする亮佑に、多江はいつも適当な相槌を返している。
せっかくの休みなのに。
多江は亮佑に気付かれないよう、小さく嘆息した。