流星群【短編集】
やがて、狭い路地の一角に、シートで覆われた5階建ての建物が見えてくる。
これが亮佑が話していたビルか。
確かに、日曜だというのに、作業員が忙しなく動いている。
亮佑は現場の責任者らしき男に声を掛ける。
責任者らしき男は、近くにいた作業員に何やら指示を出す。
すると、作業員は現場に止めてあった軽ワゴンからヘルメットを二つ取出し、亮佑に渡した。
『はい、これつけて』
亮佑は、所々傷や汚れの付いた白いヘルメットの一つを多江に差し出す。
『えっ』
多江は戸惑う。
これを被るってことは、中に入るの?
不安げな多江をよそに、亮佑は慣れた手付きでヘルメットを被り、顎紐を締めた。