流星群【短編集】
『腹減った。俺もラーメン食う』
孝一は部屋の隅にある段ボール箱からカップ麺を取り出す。
誰かのスロットの戦利品だ。
『お湯沸いてるよ〜』
秀人がスープをすすりながら言った。
孝一はカップ麺の蓋をあけ、これまた誰かが持ち込んだ電気ポットでお湯を注ぐ。
『お姉さん方はどうなの?』
孝一の問いかけに由樹が応えた。
『まぁ、ぼちぼちかな』
真面目な由樹はコツコツ図面を描いていたから、どちらかといえば進んでいる。それでも余裕があるかと言えば、なかなか厳しいようだ。
『いいなぁ、由樹は。あたしぜんぜぇ〜ん』
千秋は諦めたように、シャーペンを投げ出し立ち上がる。
千秋の図面はまだ下書きで、しかも指定された枚数の半分しか終わっていない。
千秋は、製図台脇の机に置かれたマグカップとインスタントコーヒーの瓶を手にとる。
『コーヒー飲もう』
『あっ、あたしも飲みたい』
由樹の便乗に、千秋は笑顔を作って応える。
『ってか、由樹のニット帽どこで買ったの?』
カップにインスタントコーヒーの粉を入れながら千秋と由樹は話をする。
『これ?駅前のねぇ…』
由樹は被っていたニット帽を脱いで手にとって言う。
『女の子は元気だねぇ』
カップ麺3分待ちの孝一が溜め息をこぼしながら言う。
連日深夜までの卒業設計とバイトにやや疲れ気味だった。
『たくましいっつうかさぁ』
納得したように秀人が言った。
彼のカップ麺は空になっていた。