黒の葬祭者
「…ねぇ、アカツキ」
ティーポットにお湯を入れながら、ぬばたまは流暢に口を開いた。
真夏の昼。
いくらクーラーが利いた部屋とはいえ、黒の長袖長ズボンにYシャツ。
汗一つ浮かべずお湯を注ぐ姿に、アカツキは寒気に似た疑問を浮かべた。
「質問、理解してる?僕、そんな風に『見える』?って訊いたんだけど」
茶葉を蒸す数分間。
それを理由に視線をアカツキに戻した。
その表情に、アカツキは言葉を呑む。
緩やかに弧を描く目と口。
嘘臭ささえ感じるその透明さは、先刻も感じた通り神に仕える者の微笑みなのだ。
外見だけでは、アカツキの言ったことを感じることは出来ない。
「…ミエマセン……」
「でしょ?」
訊ねられた質問の意味を理解したアカツキは諦めたように前言を撤回した。
そして思い出した。
昔から、この男にはかなわないのだということを。
敗北を悟ったことを理解しているのか、ぬばたまはそれ以上言葉を紡がずティーポットに関心を向けている。
数秒後には、カップにこれ以上ないくらい綺麗な琥珀の液体が注がれた。