黒の葬祭者
軽い雑談が交わされて数分。
かちゃりと置かれたカップが鳴った。


「…さてと。そろそろ本題に入りましょうか」


ぬばたまは微笑みを絶やさずに脚を組む。
その言葉に、男はニヤリと笑った。


「バレていたか」


「まぁ…貴方が本当に俺等の顔だけ見に来るような人じゃないことはわかってますしね」


ぬばたま達とはは少々離れた場所。
そこで2人の様子を見ていたアカツキは頬を掻いた。

それに男は楽しそうに目を細めた。

話が変わった瞬間。
纏う2人の男達の空気が一変する。

男がぬばたま達を信頼する理由だった。


「なぁに、大した内容じゃない。あることについて調べてもらいたくてね」


はぁ、と溜息が零れた。


「…貴方にしては、くだらない」


「そうかね?」


ぬばたまが明らかな落胆を見せた。
組んでいた脚を下ろし、カップを取る。

相変わらず、紅茶の柔らかな匂いが香った。

アカツキは当然の反応であると理解していた。
男が持ちかけてくる内容は、いつも手間がかかり危険が伴う。

ぬばたまは男の持ってくるその「面倒臭さ」を気に入っていたのだ。

それが、提示されたのは調査。
ただ調べるだけのそれは、彼の手にかかれば1日もかからない。

落胆するのも無理はなかった。
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