黒の葬祭者
男は相変わらず口元を緩めたまま。
静かに紅茶を啜った。


「…まぁ聞きなさい。近頃、頻繁に起こっている事件を知っているだろう?」


「あー…なんか変死体がどうのってやつっすよね?」


話しに興味をなくしたぬばたまの代わりに、アカツキが答える。

男が提示した話を省いたのは、ぬばたま達がその話しに目を付けていると確信を得ているからだ。
それがわかっているからこそ、アカツキも「何の」とは訊かなかった。


「そうだ。躰の骨だけが粉砕されていたり、雑巾のように捻られていたり」


「やったのは能力者…ですよね?」


アカツキが訊ねた言葉に、男は頷く。

能力者とは、ぬばたまのように特殊な力を持っている者のことだ。
世間一般ではその力は稀であり、存在すら殆ど知られてはいない。

能力を持つ者は、その殆どが表の世界では生活せず、影でひっそりと存在している。


「…つまり、裏の世界の能力者が何故、表の世界で騒がれるようなことをするのかが知りたい訳ですか」


静かな声が話しを割った。
視線を向けると、ぬばたまがにこりと微笑んでいる。


「相変わらず、キミとは話しが早くて助かる」


男がカップを置いた。


「…引き受けて、くれるだろ?」


男の視線は奥光りして鋭かった。

その瞳に。
ぬばたまは今までとは違う笑みをゆっくりと作って見せた。
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