HDD彼女
第1章

電気街

 俺の職業は『自宅警備員』だ。
 収入は一応あるんだけど、外に働きに出ることもない。
 一年のほとんどを自宅で過ごしているからには『自宅警備員』という呼称が自分でも適当だと思っている。
 まあ、とはいえ俺は親と一緒に暮らしているわけではない。
 気ままな一人暮らしというヤツだ。
 三年前に突然死去してしまった親の遺産がそれなりにあったことと、月々の生活費をデイトレードでうまく稼げているおかげで絶賛ヒキコモリ中なのだ。

 とはいえ、生活に困るようなことも全然ない。
 食事はデリバリーでピザでも中華でも、ホカ弁でも持ってきてくれるし。
 生活に必要なものでもネットで買うことが出来る。
 トイレットペーパーみたいな日用品から、最近は薬なんかも手に入る。
 本当に俺みたいな人間にとっては便利な世の中になったものだと実感する。

……が、こうやって便利すぎるから引き篭もっているとも言えるのだが。
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