HDD彼女
 清算を済ませてエレベーターに乗るまでに俺の興奮はマックスに達していたのであるが……店から出てしまうとひとしきりの興奮状態というものを抑えておかなければならない必要があるのだ。
 簡単に言えば、自分の鼻息の荒さをエレベーターの中で聞いてしまい、その音があまりにヤバいと感じた俺は、必死に気持ちを何とか落ち着かせるように自分に言い聞かせたのだ。
 
――こんなテンションで街中を歩けば、いかに電気街とはいえお巡りさんに職務質問を受けてしまう。

 そうなってしまうと、もしかしたらリュックの中に入れてあるエチケット用の鼻毛切りハサミや爪切りが見付かって、それが凶器に認定されてしまい交番や警察署に連行されてしまうかもしれない。
 ヘタに抵抗なんてした日には、留置所に送られて今日中に帰れなくなるかも知れない。
 さらにヤバい状況を想定すれば――俺に職務質問をしてきた警官が悪徳警官で、無実の俺を捕らえた上に無辜の罪で長期の懲役刑に持っていく……なんて事も絶対に有り得ないとは言えない。

 そうなれば、俺の帰宅は大幅に遅れてしまう状況になってしまう訳で、仮に帰れなくなってしまった日には泣くに泣けない情けない状態になってしまうことが容易に想像出来る。
 
そんな理性を利かせた判断のもとに、店内に居る間に何とかテンションを下げたのである。
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