ＨＤＤ彼女

帰宅

　いつもながらの事なのだが――電気街で過ごす時間は充実したものなのだが、俺はこの電車というものが苦痛で仕方ない。
　乗り物として苦手、という訳では無く空間として非常に苦手としているのだ。
　全く――まるで見知らぬ他人同士で、どうしてこうも狭い空間を共有しないといけないのだろうか？
　酷い時には、まるで知らない、本来ならば関わりを一切持ちたくないような他人と密着するハメになり、さらに言うならばそんな状態であるにも関わらず、なぜかこちらが申し訳ないような気分にさせられてしまうのだ。
　おまけに、最近は『女性専用車両』なんていう余計なものが出来てしまった為に、車内は限られた車両とスペースを奪い合うようにむさ苦しいオッサンや脂ぎったオタファッションの同士で溢れ返るような始末になってしまっている。

　今日も今日とて、地下鉄から私鉄に乗り換えた時点で電車内は満員である。
　いつもよりも早い時間に帰宅することにしたのが裏目に出てしまったのだろうか、帰宅ラッシュの時間に重なってしまったようで、電車内は立つのやっとという位の人口密度の高さである。
　迫りくる人混みから、自分の身体以上に大事な荷物を守るような姿勢で電車の中で襲い掛かって来るプレッシャーに耐える。
< 31 / 50 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop