手
大音量で有線の流れる店内。
閉店後のホールで、あたしは床掃除をしていた。
つい、溜め息が出てしまう。
けどよかった。
好きになってしまう前で。
そう自分に何回言い聞かせているだろうか。
ジュンさんと埜乃ちゃん、お似合いじゃない。
そう言い聞せようとすると自分と。
何で埜乃ちゃん?
そう不満を持つ自分。
さっきからずっと行ったり来たりの思考回路。
「もう終わる―?」
ゴミ袋を3つも抱えたジュンさんが聞いてきて、あたしはふと我に返った。
「あ、はい」
止めてしまっていた手を動かし始める。
「よし、早く飲むぞ―!!!!」
明るく言いながら、ゴミを捨てに外に出る。
そんなジュンさんの後ろ姿を見ながら、あたしはまた溜め息をついた。