手
「あんなにお似合いだったのに、勿体無いですね―」
と埜乃ちゃんが言った。
しーん、と場の空気がなってしまった。
どうしようかと困ってしまう。
「どしたー?」
丁度トイレに行って席を外していたジュンさん言う。
戻って来て、この場の空気の違いを察知したよう。
「いや、ちょっと」
気まずそうにヒロちゃんが言う。
「もー、どうせ俺の悪口とかでしょ」
嫌になっちゃう、そう冗談のように続けて言うジュンさん。
ジュンさんの一言で、また場に笑いが広がる。
そして皆、また飲み物を進めながら話題を変える。
よかった。
何とか場の空気が元通りになって、あたしはほっとする。
彼のことを思い出すには、まだ少しつらい。