手
「ジュンさ―ん」
トイレから戻ってきた埜乃ちゃんが、へなへなと座り込む。
ジュンさんの腕に自分の腕を絡めながら。
「気持ち悪い」
そう言ってうつ向く埜乃ちゃん。
ジュンさんはそんな彼女の背中を優しく擦る。
「大丈夫か?先に帰る?」
そんな声掛けに、埜乃ちゃんは首を縦に振る。
「タクシー呼ぶから待ってて」
そう言ったジュンさんは、まだ吸い始めの煙草を灰皿に押し付ける。
優しく埜乃ちゃんの腕を解き、席を立つ。
「大丈夫?」
空いたジュンさんの席に移り、埜乃ちゃんに声を掛ける。
「埜乃、すぐ来るって」
ジュンさんはすぐに戻って来て、埜乃ちゃんの腕を取る。
「ごめん、外出して来るわ」
そう言って埜乃ちゃんを立ち上がらせ、席を立つ。
あたしは埜乃ちゃんの荷物を持ってあとに続いた。