手
タクシーが来るまで、終始ジュンさんにべったりの埜乃ちゃん。
ジュンさんは、優しく埜乃ちゃんを支えながら待つ。
そんな二人を見ると、本当に付き合ってるんだと実感する。
「あ、来た」
ジュンさんがタクシーのライトに反応して顔を上げる。
「んぢゃ、気を付けてな」
埜乃ちゃんを手際よく乗り込ませ、ジュンは手を振る。
埜乃ちゃんは少し不機嫌そうな様子。
そんなまま、タクシーは発進した。
「一緒に帰らなくてよかったんですか?」
躊躇いがちに尋ねたあたしに、ジュンさんは困り顔。
「いや、甘やかしてもね」
その表情は少し疲れたようで。
あたしは気まずくなって黙ってしまった。
「気使わせてごめんな」
そう言ってまた、あたしの頭を優しく撫でる。
そしてそのまま、あたしの肩に頭を載せる。
「ごめん、ちょっと疲れた」