手
「佳奈ちゃんは?」
ジュンさんが煙草の火を消しながら尋ねてくる。
「友達が迎えに来るまでここにいますよー」
そう言うと、ジュンさんはまた煙草に火を付ける。
「んじゃ俺、付き合うわ」
「ありがとうございます」
あたしももう短くなった煙草を揉み消して、また新しいのに火を付ける。
「……昨日はごめんね」
ジュンさんがそう言って、少し気まずそうに笑った。
昨日。
『ごめん、少し疲れた』
埜乃ちゃんをタクシーに乗り込ませた後のことだろう。
ジュンさんはあの後、すぐに我に返ってまたごめん、と言った。
飲みの席に戻っても普通に明るく、皆と騒いでたし。
ただ酔っただけなんだと、あたしは気にしないように努めていたけど。
「いや、全然いいですよ」
あたしもつられて気まずい気持ちになりながらも答えた。