手
「埜乃ちゃん大丈夫だったんですかね?」
今日は元々シフトが休みだった埜乃ちゃん。
体調が気になって尋ねてみる。
ジュンさんは困ったように笑う。
「たぶん。てかあんまり酔ってるように見えなかったけど」
伏し目がちになりながらそう答える。
「何が気に入らなかったのか分かんないけど、たぶん不機嫌だっただけ」
よくあることだし、とそう呟く。
確かに、そう心の中であたしは頷いた。
女の子らしくてふわふわした印象の埜乃ちゃん。
けど実は一癖も二癖もあったりする。
可愛いから多目に見ちゃうけど、結構我が侭。
気に入らないことがあるとすぐに不機嫌。
それが原因で、とは言いきれないけど彼氏とも長続きしないし。
しーん、と静まるスタッフルーム。
丁度その時、またあたしの携帯が震える。
『着いた』
短い用件だけのメール。
「友達来たみたいです」
あたしはそうジュンさんに伝えながら煙草を消した。