手
着いたのは、麗真とよく行く小さなダイニングバー。
「飲むの?」
あたしの問いかけに、首を振りながらメットを外す麗真。
「運転あるし。お前飲んでいいよ。送るし」
麗真はあたしのマフラーとメットも外し、トランクにしまう。
「無性にここの玉子焼きが食いたくてさ」
麗真が笑う。
あたしもつられて笑う。
店に入って通されたのは、奥の座敷。
半個室的なその空間に座ると、麗真がすぐに煙草を口にした。
「飲む?」
ドリンクメニューを広げて、あたしに差し出す。
「んじゃ少しだけ」
あたしは麗真の好意を受け取って、メニューに目を向ける。
麗真はボタンを押し、早くも店員を呼ぶ。
「とりあえず玉子焼きとコーラ」
そしてあたしに目配せする。
「カシオレ下さい」
あたしもドリンクを頼むと、煙草に火を付けた。