手
「お待たせしました」
そんな中、気まずそうに店員がハニートーストを持って来る。
「……とりあえず食べな」
麗真が気が抜けたように笑いながら、フォークを手渡す。
あたしはそれを受け取って、一口自分の口に運ぶ。
いつもは一口目がすごくおいしいハニートーストも、今日は味を感じない。
大学辞めたって何?
部活は?
てかまだ東京に住んでるの?
ううん。
何より、今更何?
頭の中に色んなことが駆け巡る。
「ごめん」
麗真が少しうつ向きながら言った。
「お前アドレス変えたろ?だから拓海、俺に連絡してきてさ」
あたしはただ首を振った。
違う。
麗真は何も悪くない。
んじゃぁ、悪いのは?
…………そんなの、分からない。