手
『ジュン、冷たいんですよ』
埜乃ちゃんの質問は、いつしか愚痴へと変わっていて。
メールを返してくれない。
電話にも出てくれない。
バイトを辞めてから、一回も会ってないのに、と。
『あたしのこと、何も考えてくれてないんです』
エスカレートする愚痴に、さすがのあたしもイライラ。
「埜乃ちゃん」
気付いたら、自分でもびっくりする位冷たい声。
「ジュンさんも忙しいんじゃないの?」
理由がそれだけじゃないってことは百も承知だった。
『……っにしても』
埜乃ちゃんもそれは主張する。
けど。
「埜乃ちゃんこそ、ジュンさんのこと考えてる?」
あたしははっきりと言った。
ガソスタでバイトしてからの焼肉屋でのバイト。
いつも後半は疲れきっているし、眠たそう。
彼女なのに、彼女のくせに。
そんなジュンさんを思いやれないの?