手
しーんと静まる車内。
気まずい雰囲気に負けて、何も言えなくなった。
やっぱり言わなきゃよかったかな、なんて少し後悔したり。
「……ごめんね、変な話して」
元々話を振ったのはあたしの方なのに。
ジュンさんが申し訳なさそうに謝る。
「失礼かもしれないんですけど」
あたしは、大きく深呼吸をしてから切り出す。
本当はずっと気になっていたこと。
今を逃したらもう聞けない気がして。
「何?」
ジュンさんが優しい口調で尋ねて来る。
あたしはもう一度、大きく深呼吸をして口を開いた。
「埜乃ちゃんのこと、好きなんですか?」
あたしの問いかけに、ジュンさんは苦笑い。
本当に失礼だなー、なんて笑いながら。
「実は、俺も分かんないや」
そう、ジュンさんは答えた。