手
「お疲れー」
ボーリング大会から三日経った日のバイト。
終わって店を出て、皆と挨拶をする。
自分の原付に向かって歩き出したあたしに、近づく足音。
「ちょっと時間ある?」
振り返ったあたしに、そう問掛けたのはジュンさんで。
「ちょっと報告があるんだよね」
そう続ける。
あたしはただ頷くと、ジュンさんに促されるまま車に乗り込む。
しばらくの沈黙。
この前の話を思い出して、気まずさまで蘇ったかのよう。
「埜乃と、ちゃんと別れたから」
呟くように、そう報告するジュンさん。
何となく予想できていた報告。
あたしは黙って頷くしかできなかった。
「佳奈ちゃんのおかげ。ありがとね」
そう言って笑うジュンさん。
いつもと変わらない笑顔なのに、あたしは何となく一緒になって笑うことができなかった。