手
「そういえばさ」
心臓がやっと落ち着きを取り戻した頃。
ジュンさんが再び手を止めて、あたしの方を見る。
「佳奈ちゃんは彼氏とは?」
え?
あたしは突然の話題に、何も答えられずに固まってしまう。
「前埜乃が言ってたからさ、東京の彼氏のこと」
そう言って、ジュンさんがパズルのピースをはめる。
「あぁ、実はだいぶ前に別れてますよ」
あたしは苦笑いをしながら答える。
この前の飲みでは丁度、ジュンさんは席を外してたもんな。
「んじゃ、今いないの?」
ジュンさんがまた手を止めて、あたしを見つめて聞いてくる。
何だかその近い距離が恥ずかしくて、あたしはパズルの方に向き直す。
「いないですよー」
再び高鳴る心臓を必死に抑えるようにして、笑顔で答える。
「えー、勿体無い」
ジュンさんもパズルに向き直って、またピースをはめる。