手
「あれ佳奈の元カレっしょ?ヨリ戻したの?」
どこから現れたのか、ダイさんがニヤニヤしながら聞いてくる。
「いや、……てか」
あたし自身何が何だか状況掴めてない。
戸惑って、何も言えないあたしを見つめる複数の目。
忙しい店内ほったらかしで、ヒロちゃんとダイさんは答えを待つ。
「何?面白い話?」
キッチンからヤスさんまでもが顔を出す。
そして、近づいてくるジュンさん。
あぁ、敵がまた増えた。
なんて思いながら溜め息をつくあたし。
「……おい、くだらない話は後にして働け」
そこに、予想外のジュンさんの言葉が響く。
「えー……」
ヒロちゃんが、解放されたばかりの口を開く。
「ほら、あそこのオーダー取りに行け」
有無を言わせないジュンさんの指示に、一斉に散らばるあたしたち。
くだらないって……。
あたしは沈む気持ちを必死に無視して、ホールに戻った。