手
「お疲れさまでしたー」
今日はラストでなく、22時までだったあたし。
皆よりも一足先に上がって、スタッフルームへと移動する。
サロンや帽子を外し、棚へとしまう。
ふと携帯へと目を向けると、黄緑のランプ。
履歴を確認すると『麗真』の文字。
今日の突然の麗真の行動に、少なからず腹を立てていたあたしはすぐに発信ボタンを押した。
数回のコールで、電話は繋がった。
「もしもし?」
何もいつもと変わらない様子の麗真。
あたしの怒りのボルテージは上がる一方。
「……今日の、どういうつもり?」
確かに、放置してたあたしも悪い。
けど、いきなりあんなのって。
「……ごめん、俺が悪い」
そう言って、耳に入ってきた声。
「……拓海?」
あたしは聞き返す。
「うん、今駐車場にいるから。待ってる」
そう一方的に電話は切れる。