手
「あ、じゃあ何で別れたのかって?」
ずっと黙り込んでしまっているあたしに代わり、自分自身で話を進める拓海。
「全部、俺の身勝手な我が侭だよ」
そう言って、拓海はまた首を回して正面を向く。
その横顔を見て、拓海がすごく痩せていることに今更気づく。
大学辞めたって麗真から聞いた。
何か大変なことがあったのは、分かってる。
「佳奈美はさ、俺のこと好きだった?」
こっちを見ずに、呟くように投げ掛けられた質問。
拓海の不安みたいなものが、伝わってくる。
「……好きだったよ?」
でも拓海の意図することが分からなくて、あたしは疑問系で返してしまう。
「そっか……」
拓海が、顔をあげる。
さっきよりも安心したような、けど何処か苦しそうな表情。