手
「俺、こうして仕事も決まったし。今なら言っていいかな?」
そう言って、あたしをやや強引に抱き寄せる拓海。
「好きだ」
半年前よりも痩せた拓海の腕だけど、それはまだまだ力強い。
「もう一度、やり直したい」
そう言って、抱き寄せる腕により一層力がこもった。
密着する拓海の体から、拓海の鼓動が聞こえる。
そのリズムがとても早くて、拓海の真剣さが伝わってくる。
何も言わないあたしに、拓海が不安そうに声をかける。
「……佳奈美?」
あたしの体を少し離して、顔を覗き込む。
あたしの頬には、さっきとは比べ物にならないくらいの涙が溢れてきていた。