手
「……ごめっ…」
やっと絞り出した声は、はっきりとは発音できなかった。
けど拓海は、その意味を理解したようで優しくあたしの頭をまた撫でてくれた。
「そっか」
ただそう言って、また訪れる沈黙。
「ごめんね」
もう一度、今度ははっきり言う。
拓海のこと、解ってあげられなかった。
気持ちにも応えてあげられなかったし、今も駄目だった。
支えてあげたい気持ちはある。
けど、もう……。
「そんな謝るなって。俺今ちょっと嬉しいんだから」
拓海はそう言って、笑った。
「初めて佳奈美が俺の前で泣いてくれたから」
今の俺、少しは頼りがいあるかな。
微笑みながらそう言う拓海に、また涙が溢れ出た。