手
「あのさ」
吸っていた煙草も残り少しになった頃。
ジュンさんが煙草を押し消しながら口を開く。
「はい?」
ただぼーっとジュンさんの煙草を見つめていたあたしは、慌てて我に返る。
何だか急に慌ててしまって、今度はあたしが煙草に火を付ける。
「……大丈夫?」
「え?」
思いがけない問いかけに、あたしはまた視線をジュンさんに戻した。
顔を上げた瞬間に頬に添えられた手に、一瞬びくっと反応する。
「泣いてたでしょ?」
ジュンさんが見てるのは、きっと涙の跡。
結構泣いてしまったし、誤魔化すには無理そう。
もしかしたら目だってまだ赤いかもしれない。
何も答えないあたしに、ジュンさんが手を離してまた煙草に火を付ける。
「何話してたの?結構長い時間」
そう言ってまたあたしを見るジュンさん。
今更ながら隣に座ってるジュンさんとの距離は近くて。
泣いたことがバレたこともあってか、妙に恥ずかしくなった。
あたしは煙草の灰を落とすフリをして視線を反らした。