SKY~伸ばしたその手の先~
大きな音を立てて扉が引かれた。
その音にどきりとする。
三島先生の後ろにくっついていくようにして
私は教室に足を踏み入れた。

真っ黒・・に見えたのは学ランのせいか。
まだ動転しているらしい。
茶髪の子は多いけれど
金髪や赤や青に染めた子はいなかった。
そういうのってもう古いのかしら。
私はまだ溶け込めそうな髪の色に
ほっとしてみる。

「今年このクラスを受け持つ三島だ。
卒業できるようがんばれ」

それだけ言うと三島先生は私に合図した。
挨拶しろということらしい。

「相原香澄です。
副担任をさせていただくことになりました。
あの・・よろしくおねがいします」

やっぱりパニックになって
なんだか言葉遣いもあやしくなってしまった。
こんなので国語の教師やっていけるのかしら。
ううう。不安になってしまう。

「先生、独身ですか?」

窓際の男の子が突然声をあげる。
びくりとして固まっていると
三島先生が「俺のことか」と
口元をゆがめて言った。

「三島じゃねーよ。香澄ちゃん!」

す・・既にちゃん付けですか。
先生の威厳なし。
失格~と言われた気がしてへこんでしまう。

「こんなちびっこに男いるわけないだろ」

他の生徒から上がる声にさらに落ち込む。
ううう。
どうせちびっこよぅ。
男がいないのは一生いないと思うからいいんだけれど
背のことでからかわれるとむっとしてしまう。

「口元への字になってる」

突然三島先生に口元を指差されて後ずさってしまう。
触れられたら冷静でいられるかわからない。
無理やり笑顔をつくって三島先生をみあげた。
大人にならなきゃ。
もう私だって先生なんだもんね。
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