pain

大人

僕が家出をしたことで、あの大げさな母親は騒ぎ立てているだろう。
間違いなく捜索願いくらいは出しているだろう、
父親は父親で、そんな母親とは不仲で、仕事に没頭してなかなか家に帰って来ない有様、
母親はどこか寂しかったのかもしれない、そんな心の隙間を僕という息子に過剰に注意を向けることで紛らわせていたのだろう…

ただ、母親は本当の意味で利口な人ではない、そのことが妙にシャクに障った。

少し肌寒いなか、半ビショのパーカーに震えながら、重いバイクを押して車のまばらな国道沿いをトボトボ歩いていた。

おーぃ


一台の車が後ろからゆっくりちかずいてきて、僕の進む真横に並んだ…

先生…

真っ黒な外車からウィンドウが開いて、中年の少しほっそりした見覚えのある顔に、一瞬すぐに思い出せなかった。

このあいだの精神科クリニックの先生だった。
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