†Orion†


二度目のキスは、一度目よりも長かったように思う。


これが、最初で最後のキス。

そう思ったら、このままずっとキスしていたかった。


明日になれば、いつもの生活に戻る。


優菜さんは、妻として母親として、慌しい毎日を送る。

俺は、ただ優菜さんを思い、見つめるだけの日々。



現実に戻りたくなくて、もう少しだけ夢を見ていたくて。

二度目のキスのあと、俺はそのまま優菜さんを抱きしめた。



どんなに頑張ったって、彼女は俺のものにはならない。

“努力は報われる”そんな言葉、大嘘だ。



不甲斐なく零れ落ちた涙が、彼女の肩を濡らす。



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