†Orion†
「――本当に何もなかったの?」
「……何もなかったって言ってるだろ? しつこいぞ、おまえ」
あの夜、俺と優菜さんがしばらく戻って来なかったことを、弘美はしっかり気づいていた。
抜け出した俺たちのあいだに何かがあった。
そう見抜いた弘美は、しつこく訊いてきた。
「だいたいおまえさ、人のことに首突っ込む前に自分のこと何とかしろよ」
しつこく訊いてくる弘美にうんざりしてしまって、俺はさらりと話題を変える。
「なんであたしの話になるわけよ?」
「いっつも俺にくっついて。そんなんじゃ男できねぇぞ?」
「別に男に不自由してないわよ。あたしは雅人を好きだからそれでいいの」